LECTURE

中学特別文化講演会 文部科学大臣補佐官 鈴木 寛氏

2017/08/01

君たちは世界史をつくるような人物になれ

 

今、阪大で心臓をiPS細胞からつくったり、神戸の理化学研究所でも世界で初めて網膜をiPS細胞からこしらえたりと、日本、特に関西から世界を救うような医療技術が生まれています。一方で、iPS細胞を利用すれば男子の髪の毛から卵子を、女子の髪の毛から精子をつくることもできる。倫理的なリスクも生まれてきます。モノゴトには光と影の両面があるので、これからは理系と文系の両方をわかっておく必要があります。

また、私たちはこれから日本人以外の人や日本語を母語としない人たちと日常茶飯に付き合っていかなければならなくなります。そういう人たちと仕事をすれば日本人だけではできなかったことができたりしますが、一方で常識が異なるため「なんでこんなことがわからないの?」と、毎日ぶつかり合うようにもなります。こうした矛盾や葛藤を私は「板挟み」と総称していますが、社会のグローバル化が進むと板挟みは日常になります。これからはこの板挟みになってもへっちゃら!大丈夫!と向き合い、乗り越えられる人材が必要になります。AIが解なしと答えるような難題を多角的に見たり、いろんな人たちと協力しながら一緒に解けたりできる人に、君たちにはなってほしい。人生の土台をつくり、自分のライフワークを見つける中学高校時代ですが、やりたいことがすぐには叶わなくても、いろんな経験を通じて板挟みにもあいながら対応力を身に付けてほしいと思います。

これまでは知識技能が大事でしたが、これからは基本的な知識もきちんと学びながら、特に「概念」を深く理解してほしい。モノゴトを自分が直面している問題に照らし合わせながら自分で考え、判断し、表現できるよう心がけてほしいのです。そして、主体的に多様な他者、いろんな人たちと協力する力も身に付けてほしいですね。

今後、高校では教科が変わります。文部科学省の新学習指導要領によれば、たとえば「総合的な探求の時間」といって友だちと何か一つのテーマを掘り下げ、探求する新しい科目が加わります。これまでは大学でやっていた探求研究活動を、高校から始めて加速するためです。西暦2000年頃までの約300年の歴史を世界史・日本史まとめて学ぶ「歴史総合」や、いろんな価値観をもった人と協力しながら、時には板挟みになることも想定して学習する「公共」など、すべての科目が「思考力・判断力・表現力」や「主体的に多様な他者と協働する力」を身に付けていくための科目に変わります。今の中3の人から受験することになる「大学入学共通テスト」では、深く考える問題、「思考力・判断力・表現力」を問う記述問題も導入されますから、君たちはとにかく本を読み、先生や友だちと議論をして、自分の考えを原稿用紙にまとめることをひたすら繰り返してください。このことが思考力、言葉と数字でものを考える力を養ってくれます。

フランスの18歳は大学入試で、「我々は幸せになるために生きているのか」という問いに1時間かけて答えます。これ、理系の問題ですよ。そんなフランス人と君たちは将来一緒に仕事をするかもしれない。だから、新しい入試に変えていくのです。もう一度言います、「君たちが未来をつくる」んです。幸せな未来とは何か?何が幸せなのか?も君たちが考えるのです。考えて考えて、試して試して、そして失敗しても失敗しても成功するまで諦めずに頑張る。そうすれば、君たちは必ず幸せな人生を送れると思います。

三田学園にはスポーツやビジネスなどいろんな分野で日本の歴史をつくってこられた先輩がたくさんおられます。そして、その後輩は必ず現れる。先輩が日本史をつくってこられたのなら、君たちは世界史をつくるような人物になることで、先輩への恩返しならぬ後に続く世代への「恩送り」をしてほしい。そう願って、私の講演に代えさせていただきます。ご静聴ありがとうございました。