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通信欄

EDX(Educational Digital Transformation)のはじまり

2020/06/22

学校法人三田学園 理事長 丸泉琢也

 まだまだ終息の兆しが感じられない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を追い風として、日本の高等教育の現場ではこれまでの面接授業一本やりであった講義形態が、ZoomやWebexなどのTV会議システムを用いた双方向遠隔授業や学生が好きな時間に講義内容を視聴できるオンデマンド授業などへのパラダイムにシフトしつつあります。一言でいえば、まさにEDX(Educational Digital Transformation)がはじまろうとしているといえます。

 デジタルトランスフォーメーション(DX)とはクラウド、ビッグデータ、ソーシャル技術などの新たなデジタル技術を駆使して新しいビジネスモデルを創出し、社会ニーズに合わせて臨機応変に改変してゆくという企業経営戦略として注目を集めているものですが、まさに日本の教育の世界でも同様な潮流が生まれつつあります。社会ニーズを『学修者本位の教育ニーズ』に、新しいビジネスモデルを『学修到達度が高く、自発的な学び・気づきを誘う価値の高い斬新な授業』と置き換えて考えてみるとわかりやすいのではないでしょうか。

 これまで日本では、板書にかわりパワーポイント図面をプロジェクタでスクリーンに投射したり、教材を拡大したり書き込みができる電子黒板を導入したりする教育環境のICT化、言い換えればアナログをデジタルに置き換えること、すなわちデジタイゼーション(Digitization)による効率化はそれなりに進められてきたと思いますが、デジタル技術を活用することで従来の面接授業では得られない『学修成果』や『教育効果』を生み出す努力、すなわちデジタライゼーション(Digitalization)への取組はほとんど行われてこなかったのではないかと思います。今回のコロナ禍による外圧で否応なく動いたというのが、大学の副学長職を兼任し2月以降の大学教育現場の混乱と新学期授業開始に向けた大学教職員の苦悩を直接肌で感じてきた私の正直な感想です。文部科学省の調査では、全国の国公私立大学、高等専門学校1066校のうち641校が遠隔授業、322校が面接・遠隔授業の併用、両者合わせて90.3%とほとんどの大学・高専が遠隔授業を実施しています(2020年6月1日時点)。今後は、面接・遠隔オンラインでのハイブリッド形式での授業がさらに広範に行われ、併せて新たな教育方法の開発も進展してゆくものと確信しています。

 欧米に比べMOOCs(Massive Open Online Courses)などのオンライン教材が不足している日本も今回のコロナ禍を契機としてコンテンツの充実が図られてゆきます。大学でのEDXのトライアルが初等中等教育の現場にも形を変えて浸透し、GIGAスクールの推進と並行して児童・生徒の教育もこれまでのものから大きく変貌してゆきます。幸いにも三田学園においては生徒全員にiPadを配布していたおかげで、コロナ禍第1波に呑まれることなく厳しい環境での教育を乗り越えられたと考えています。新時代の教育の先頭に立ち、コンテンツの充実を図り、個々の教員の強みを発揮する新しい教育法を開発することが、今後の三田学園の課題であり、同時に大きな強みの一つとなると考えています。